《令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判は27日の第10回公判から証人尋問が始まった。同日午前からの1人目の証人に続き、午後に法廷に立った京アニの社員は、猛烈な煙から逃れるため、2階の窓から飛び降りたと証言した》
検察官「どういった仕事をしていた」
証人「スケジュール管理やスタッフのマネジメントをしていました」
検察官「担当した作品は」
証人「『Free!』や『ツルネ―風舞高校弓道部―』です」
検察官「朝礼の後、何をしたか」
証人「机で事務作業をしていました」「2階の用事を思い出し、席を立ちました」
検察官「その後はどうなった」
証人「玄関の自動扉が開く音が聞こえた」「(訪問予定のあった)取材スタッフが来たのかなと思った」
検察官「何が見えた」
証人「男が見えた」
検察官「その後は」
証人「叫ぶ声が聞こえた」「男がらせん階段の前に立っていた」
検察官「他には」
証人「右手側に黒いノズルのようなものが見えた」「黒いノズルの先端に、カチッという音とともに小さい火が見えた。男がそれを社員に向けて近づけた」
検察官「どうなった」
証人「室内が真っ白になるくらい、まぶしく光った」「ガソリンの臭いと熱風が自分のところに届いた。ガソリンをまいたのだと思った」
《周囲の光景が一変する。『うわ、うわ、うわ』と近くにいた別の社員が3回叫んだ。ライターの火を近づけられた社員の足元から炎が立ちのぼり、瞬く間に全身を包む。同僚たちが悲鳴を上げ、次々と火災にのまれていった》
検察官「この後、どう行動した」
証人「2階、3階のスタッフに避難を促さないといけないと思った。後ろ手で1階階段の扉を閉めて、階段を駆け上がった」
検察官「どういう気持ちだった」
証人「1階スタッフへの申し訳なさと、何とか逃げてほしいという思い」
検察官「(2階の)室内はどんな様子だった」
証人「らせん階段から少し煙が上がっているのが見えた」
検察官「あなたは何をした」
証人「『火事だ、逃げろ』と言った」
検察官「消防に通報しようとした?」
証人「電話の受話器をあげたが、つながらなかった」
検察官「その後は何を」
証人「煙を逃そうと北側の窓を開け、すぐ横にある倉庫の窓も開けた」
検察官「その後は」
証人「煙がすごくなってきたので地面に伏せた。水道でタオルをぬらして口にあてた」「煙がすごくて呼吸ができず、このままでは死んでしまうと意識朦朧となった。北側の窓に向かった」
検察官「窓にたどり着いた後は」
証人「窓枠によじのぼり、室内に向かい合うような形で体を外に出して窓枠につかまった」「両手を放して下に降りた。エアコンの室外機で腰を強打したが、足が動くか確認して移動した」
検察官「移動した後は」
証人「他のスタッフに『飛べ!』と声をかけたりした」
検察官「建物の様子は」
証人「1階窓から猛烈な煙が出ていて、ガラスが割れたり何かが破裂したりする音も聞こえた。1階は壊滅的だと思った」
弁護人「玄関の自動扉からドスンドスンと大きな音が聞こえたのか」
証人「はい。本来ならスリッパを常備しており、スタッフなら(スリッパを)履いている。あまり聞き慣れない音だったので記憶しています」
《この日の証人尋問は終了。次回公判でも証人尋問が行われる》