【VIVANTのリアリティはいまいち?】外交ジャーナリスト・手嶋龍一氏が語る「日本の情報機関が抱える課題」

ドラマ『VIVANT』(TBS系)で描かれた、自衛隊の秘密情報部隊「別班」。その存在は公には認められていない。その「別班」を除くと、日本の情報機関は大きく分けて5つ。内閣官房内にある「内閣情報調査室」、法務省の外局である「公安調査庁」、警察庁警備局が統括する「公安・外事警察」、防衛省・自衛隊の「情報本部」、外務省の「国際情報統括官組織」だ。
これら日本のインテリジェンス機関にはかなりの潜在能力があると評価した上で「まだ課題も多い」と語るのは、外交ジャーナリストの手嶋龍一氏だ。
「『VIVANT』のヒットは、劇中の別班のように活躍する対外情報機関が日本にも必要だと世論が求めていることを物語っているのでしょう。ただ、防衛省は、対外情報機関を運用する基礎条件を欠いています」
手嶋氏が言う「基礎条件」は3つある。
「1つ目は資金。海外に拠点を設けて行なう軍事分野の対外情報活動には、億を超える額の予算が必要ですが、法的、制度的な背景を欠く現状では、財務当局は持続的な予算を認めないからです」
2つ目は通信手段だ。情報本部と諜報員が交わす極秘裏の通信システムは、対外情報活動を支える絶対条件だ。通常の電話、メールでは、多少の保秘装置を使っても、傍受される危険が高くて役に立たない。
「在外の日本大使館には防衛駐在官がいますが、独自の暗号システムを備えた通信手段を持っていません。高度な暗号を用いる公電は大使の裁可で打電され、受け手は外務省です。諜報員が防衛省と直にやりとりはできない。これでは極秘の対外情報活動は難しい」
3つ目の条件は何か。
「人材です。対外情報活動を担える人材がどれだけいるのか。彼らを運用するヘッドクオーターに人材が揃っているのか。『VIVANT』で堺雅人が演じる別班は、いま挙げた条件を欠き、リアリティはいまいちですが、テロや戦争から日本を守るため、相手国に浸透し最高秘密を探る任務は必要です。そのためヒューミント・対人情報活動を繰り広げて、通常の外交活動では掴めない極秘情報を入手する。時には非合法活動に手を染めることも必要になるでしょう」
手嶋氏は、パスポートの偽造すら法的に不可能な今の日本の対外情報活動には大きな限界があると指摘する。
「それでも、公安調査庁を始め日本の情報機関は、それなりの成果をあげています。かつては北方領土に密かに乗り込んで現地のロシア情報を集め、抑留者の救出に尽力した実績があります。インテリジェンス分野では、正規の外交ルートでは限界があるからです」

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