10月10日、警視庁捜査一課は強盗傷害などの疑いで中国残留孤児の2世や3世らから成る準暴力団「怒羅権」の創設メンバーの汪楠容疑者(51)を逮捕した。汪容疑者は今年3月に東京・東池袋で発生した強盗事件の“指示役”と見られている。
元「怒羅権」メンバーとしてメディアにも多数登場している汪容疑者。2021年には自叙伝『怒羅権と私 創設期メンバーの怒りと悲しみの半生』を刊行している。過去に服役していた経験から“改心”し、現在は受刑者の更生支援に取り組んでいるとされる。たびたびテレビにも出演し、情報番組のコメンテーターまで務めていた。しかし、その裏では残忍な犯罪に指示役として関わっていた。
現金109万円とノートパソコン5台などを強盗
汪容疑者の逮捕容疑となった強盗傷害事件は今年3月21日午前9時頃に発生。当日の犯行グループは8人。そのうち実行役の5人は白い作業着姿で点検業者を装い、「点検業者です」とウソをついてマンションの一室に押し入った。
被害に遭ったのは中国人経営者の男性。事件当時、現場となったマンションには女性と2人でいた。犯行グループは2人の両手足を結束バンドで縛り、現金計109万円とノートパソコン5台などを奪った。
事件が発覚したのは午前11時頃。被害者の中国人経営者がマンション9階のベランダから周囲に助けを求めたのである。
「警察!警察!警察呼んで!」と赤いシャツを振り回し…
目撃者が語る。
「『警察! 警察! 警察呼んで!』と何度も叫ぶ声が聞こえたので、見上げると年配の男性が赤いシャツを振り回していました。すぐに警察や救急車が駆けつけてあたりは騒然となっていました」
犯行グループも“無傷”では終わらなかった。
「実行役のうち2人は日本人、3人はモンゴル人。モンゴル人の1人は被害者の中国人男性の反撃に遭い、首をハサミで複数回刺されて死亡しました。その後、8月に犯行グループ8人のうち40代~50代の日本人の男4人が逮捕され、そのうち3人が強盗致傷容疑で起訴されています」(社会部記者)
警察が犯行グループの携帯電話を解析する中で犯行の指示役として浮上したのが、汪容疑者だった。
「警察は汪容疑者がいまだに怒羅権と関わっている可能性も含めて慎重に内偵を進めていました。逮捕当日には汪容疑者の関係先のスナックなどにも家宅捜索に入っています」(同前)
実際、汪容疑者は複数の容疑者と面識があったという。
「犯行グループの日本人のうち2人は今年、電動自転車のバッテリーを盗んだとして逮捕されている“盗みのプロ”です。いずれの容疑者も汪容疑者が幼少期を過ごした江戸川区やその近隣の町で暮らしており、地元のつながりで犯行グループが結成され、その“ボス”が汪容疑者だったとみられています。その一方で、20代や30代の怒羅権のメンバーは犯行グループにはおらず、怒羅権に汪容疑者が及ぼす力が弱まっているのではないかと見立てている警察関係者もいます」(同前)
近隣住民に話を聞くと…
汪容疑者は中国籍の妻と2019年に結婚。千葉県市川市に新居を建て、生活していた。「週刊文春」の記者が汪容疑者の自宅を訪ねると、1階の窓ガラスが大きく割れており目張りがされた状態。いかに警察の突入が凄まじかったのかを物語っていた。
近隣住民が語る。
「(汪容疑者は)特にご近所トラブルはなくて、普通に生活されていましたよ。非常に穏やかな人で気さくに挨拶してくれましたが……」
汪容疑者は最近、何をしていたのか。知人が近況を語る。
「最近はバーなど飲食店を経営しつつ、内装の仕事をやっていると聞きました。金に困っているという話は聞いたことがなかったので驚いています」
警察の取り調べに対し、「事件とは関係ない」と話している汪容疑者。全容の解明が待たれる。
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文春リークス: https://bunshun.jp/list/leaks
〈 「金を持っている犯罪者をさらったほうが…」強盗傷害を指示「怒羅権」創設メンバー汪楠(51)の“犯行ノウハウ”《2年前にも恐喝未遂で逮捕》 〉へ続く
(「週刊文春」編集部/週刊文春Webオリジナル)