「皆さんの手で平和維持して」 97歳元特攻隊員、宮崎大生に講演

太平洋戦争末期、軍の作戦として米艦船へ決死の体当たり攻撃を命じられた元特別攻撃隊員、庭月野(にわつきの)英樹さん(97)=宮崎市=が19日、宮崎大で講演し、学生に「これから絶対に戦争をしないように皆さんの手で平和を維持して」と呼びかけた。
講演は大学付属図書館で22日まで開催中の「宮崎基地特攻資料展」の一環で、1、2年生約130人が耳を傾けた。
庭月野さんは鹿児島県南九州市(旧川辺町)出身。1944年、18歳で海軍飛行兵曹となり、飛行機に搭乗して沖縄や台湾で船団護衛や対潜哨戒任務に就いた。千葉県の木更津基地で終戦を迎えるまで2度、飛行機で体当たりする特攻命令を受けたが、直前の異動や終戦で出撃しなかった。
講演で庭月野さんは「飛行兵だったので、ごちそうも食べられた」などとユーモアを交えて話す一方、米軍の魚雷攻撃で約1500人が亡くなった44年8月の学童疎開船「対馬丸」沈没当日朝、護衛任務に就いていたことに触れ「あの日甲板で多くの人が手を振ってくれた。(沈没は夜で)助けようがなかった」と目を閉じた。
特攻を命じられた際の心境について「先に何人もの仲間が逝った。俺たちが行かなければどうにもならないと思っていた」と振り返った。そして学生に「戦争はどちらかが負け、たくさんの子どもや老人が犠牲になる。そういう時代が来ないように努力をしてください。どこの国ともいさかいをすることなく平和に暮らせるように。お願いします」と呼びかけた。
工学部1年の合屋祐孝さん(18)は「当時は簡単に人が亡くなるのが当たり前で、心が壊れなかったのかなと思った。(戦禍にあるウクライナや中東など)『いま戦争があっているんだな』程度の認識しかなかった。もう少し関心を持ってみたい」と話した。【塩月由香】

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする