東京都文京区の東京大前で昨年1月、大学入学共通テストの受験生ら3人が刺されて重軽傷を負った事件で、殺人未遂罪などに問われた当時17歳の元男子高校生(19)(名古屋市)の裁判員裁判の初公判が12日、東京地裁(中尾佳久裁判長)であり、元高校生は起訴事実を認めた。ただ、弁護側は刑事処分ではなく保護処分が相当だとして、家裁に移送して審理すべきだと主張した。
起訴状などでは、元高校生は昨年1月15日朝、東大前の路上で通行人の男性(当時72歳)の背中を包丁で刺して重傷を負わせた上、受験生の男女2人(同18歳と17歳)の背中を刺して軽傷を負わせたなどとしている。
検察側は冒頭陳述で、元高校生は東大で医学部に進める理科3類を目指していたが、成績が落ちて自暴自棄になったと主張。東大の赤門に放火し、安田講堂前で割腹自殺をしようと考えた末に無差別に3人を襲ったとして、「危険な犯行で動機も身勝手だ」と述べた。
一方、弁護側は冒頭陳述で、受験勉強で挫折した元高校生が「受験会場で事件を起こせば罪悪感から自殺ができる」と考えて犯行に至ったとし、「こうした行動は、元高校生の未熟さを示している」と述べた。
元高校生は逮捕・送検後、刑事責任能力の有無を調べるための鑑定留置を経て家裁に送致された。家裁は昨年6月、「通り魔的に3人もの生命を脅かした重大な事案」と判断し、検察官送致(逆送)を決定。東京地検が同7月に起訴していた。