2015年に自殺した北九州市の元非常勤職員、森下佳奈さん(当時27歳)の両親が、自殺の原因は上司のパワーハラスメントなどにあるとして市に遺族補償など311万円を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(高瀬順久裁判長)は7日、公務と自殺との因果関係は認められないとして請求を棄却した1審・福岡地裁判決(23年1月)を支持し、原告側の控訴を棄却した。原告側は上告するか検討する。
森下さんは12年4月に非常勤職員で採用され、戸畑区役所の子ども・家庭相談コーナーの相談員として勤務。13年1月ごろにうつ病と診断を受け、同年3月に退職し、約2年2カ月後の15年5月に自殺した。
高瀬裁判長は、12年12月に上司から約2時間に及んで業務上の注意や指導を受けるなどして森下さんがストレスを感じたことを「業務指導の範囲内」とした。
判決は、公務とうつ病発症の因果関係を明確に判断しなかった。その上で、因果関係があったと仮定しても、退職で公務のストレス原因は消失し、退職から自殺するまでの2年間に、国家試験で不合格になるなどした出来事が心理状態に大きく影響したとして「公務と自殺との相当因果関係があるとは認められない」と判断した。
母真由美さん(61)は判決後の会見で「区役所で受けた苦痛で病になり、何年たっても苦しくてつぶされそうになる日々がいつまで続くのか、いつ終わるのかと思って絶望し、追い込まれた末の死。2年以上苦しんだ痛みだけでも目を向けてほしかった」と話した。【志村一也】