過労死や労働実態を検証した政府の令和5年版「過労死等防止対策白書」の概要が17日、判明した。理想の睡眠時間を6時間以上とした人の合計が91・4%を占めた一方、実際に6時間以上確保できた人は全体の計54・4%しかいなかった。6時間未満の人は計45・5%に上った。労働時間が増えるほど睡眠の不足感が増えるとの分析結果から、深い眠りにつく時間を十分に確保する必要性を訴えた。政府は今秋の閣議決定を目指す。
4年度に認定された民間の労災件数は、脳・心臓疾患による件数が194件(前年度比22件増)で6年ぶりに増え、精神障害による件数は710件(同81件増)で4年連続で増加した。
白書では労働安全衛生総合研究所が行った全国の就業者への調査を分析。理想の睡眠時間より実際に確保できた時間が全体的に少ない傾向があった。1週間に働く時間が20時間未満の人は理想の睡眠時間よりも「1時間不足している」か「2時間不足している」と計53・4%が回答。この割合は労働時間が多い人ほど増加し、週60時間以上では計62・3%だった。
また、分析結果では働く時間が長いほど前日の疲労を翌朝に持ち越す頻度が増え、疲労を持ち越す頻度が増えるほど鬱病や不安を感じる人の割合が増える傾向も出た。
白書は、企業で社員の健康管理を行う産業医の視点から「過労の症状で一番危険なのは睡眠がとれなくなること」として睡眠の質向上を求めた。