政府は今年度、会社員が親などの介護で離職するのを防ぐ手立てを、企業向けの指針(ガイドライン)としてまとめる。介護を家族内の問題だけではなく、企業の経営上の課題と捉え、社員向けの相談窓口を設置するといった具体的な支援体制を盛り込む。両立支援のノウハウが少ない会社で、介護離職が増えるのを食い止める。
経済産業省は来月にも有識者による検討会を設置し、指針を策定した後は速やかに企業に周知する。
同省によると、指針には育児・介護休業法で定める介護休業(通算93日)の活用法や、介護保険サービスの使い方に関する社員研修のノウハウを盛り込む。さらに取り組むべき支援策として、社内に相談窓口を設置したり、社会福祉士など外部の専門家と提携し、介護事業者に提出する書類作成を肩代わりしたりすることも示す。家事代行や食料品の配達など日常生活の支援サービスの紹介も促す。こうした取り組みを進める企業の具体例も記載する。
同法では、家族を介護する社員を支援するため、企業に対して介護休業のほか、短時間勤務や残業の免除などの制度を義務づけ、社員への周知を促している。
ただ、厚生労働省の委託調査(2021年度)によると、介護離職者の55%が「支援制度に関する個別の周知があれば、仕事を続けられたと思う」と回答。一方、33%の企業が「悩んでいる社員の課題が顕在化してこない」と答えるなど、社員の支援が十分にできていない。
総務省が5年に1度行う就業構造基本調査によると、2022年の介護離職者は10万6000人と、前回調査(17年)より7000人増えた。介護をしながら働く人も364万6000人と、18万3000人増えており、両立支援が急務となっている。