岸田文雄首相が示した「減税方針」をめぐり、疑念が広がっている。財務省主導の「増税・負担増路線」が鮮明だっただけに、「衆院解散・総選挙に向けた世論対策」などと臆測を呼んでいるのだ。自民党の青山繁晴参院議員は28日、夕刊フジの取材に応じ、「真に国民のためになる減税を」と直言した。具体策を盛り込んだ「経済対策」は来月末をめどに取りまとめられる見通しだが、岸田首相は「聞く力」を発揮するのか。
「主権者に『首相が〝偽りの減税〟を掲げ、解散・総選挙をしようとしている』と思われるような政治であってはならない。国民に直接、響き、国全体を活気づける減税でなくてはならない」
青山氏は、こう強調した。
岸田首相は25日、税収増を「国民に還元する」として、「賃上げ税制の減税制度の強化」「国内投資の促進や特許所得に対する減税制度の創設」「ストックオプションの減税措置の充実」という「減税方針」を示した。
これらが、国民の期待と乖離していたため、一部で「偽減税」の声が上がっている。
青山氏も「消費税減税」や「社会保険料の引き下げ」など、庶民の負担軽減に直結する政策こそが「真の減税」だと指摘する。
さらに、岸田首相が年内の衆院解散に踏み切る臆測があるため、「減税宣言は支持率狙いの世論対策」(野党ベテラン)との批判もある。
青山氏は「岸田首相は増税に敏感になっているが、増税ばかりを考えていると、国民に見透かされる。社保料引き上げも『ステルス的』と受け止められている。増税・負担増の現実に気づかない国民はいない。それだけ、窮状は切実だ」と力を込める。
では、今、どういった施策が必要なのか。
「武漢熱(新型コロナ)がようやく収束しつつあり、景気回復の兆しがある。税収増はそのサインだ。賃上げと同時に、消費税の減税などに踏み切れば、需要が喚起され、さらに税収も増える。『新たな財源』は必要がなく、国民に還元される。消費減税はタブーではない。もともと、消費税は柔軟に引き下げることができるのが特徴の税制だ」
青山氏は27日に開かれた「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の総会でも、こうした私見を提言した。同議連は安倍晋三元首相も熱心に参加し、後押ししていた。
青山氏は続けた。
「つい最近まで官房副長官だった木原誠二氏が、ネット番組で『減税』を口にした。現在も岸田首相と木原氏は緊密に連絡しているはずだ。減税への決意を国民に伝えたなら、国民の懐に直接、響くかたちで実行しなければならない。安倍氏は〝独裁〟批判も受けたが、自民党内の言論は極めて活発だった。重要局面の今こそ、自民党は、流れに身を任せ、情けなく状況を批判するのではなく、財務省と向き合って積極提言し、減税の実現につなげなければならない」