「西日本の大動脈」山陽道のトンネル火災、壁面400m剥がれ落ち復旧に3か月以上…周辺で長期通行止め・物流や観光にも支障

兵庫県西部の山陽自動車道下り線(西行き)の尼子山トンネル(592メートル)で今月5日に発生した火災の影響により、周辺で長期間の通行止めが起きている。トンネル内部の損傷が激しく、復旧は12月以降の見通し。山陽道は関西と山口県を結び、1日2万台が利用する西日本の大動脈。 迂回 路の交通量は3倍を超え、通過には最大で1時間余分にかかるとされ、日常生活に加え、物流や観光にも大きな支障が出ている。
迂回路渋滞で1時間余分に

尼子山トンネルは兵庫県相生市と赤穂市にまたがる。県警によると、5日午前1時頃、トンネルを走行中のトラックから出火。避難のために乗り捨てられた後続車に次々と燃え広がった。
内部は400度超の高温になり、黒煙が充満。壁面が崩落する危険があり、消火活動は外からの放水に限られ、難航した。鎮火したのは、出火から約40時間以上経過した6日午後5時半。計23台を焼損したほか、火災に伴う事故も起き計4人が重軽傷を負った。
西日本高速道路によると、火災で約400メートルにわたり壁面が剥がれ落ち、照明や表示板などの設備が使用不能になった。復旧工事は3か月以上かかるという。
火災後、下り線の播磨ジャンクション(JCT)―赤穂インターチェンジ(IC)間(約13キロ)では通行止めとなっている。

同社は出火直後から山陽道を並走する国道2号や、北部を走る中国自動車道への迂回を呼び掛けている。
主な迂回路はトンネルの約9キロ東の龍野西ICで国道2号に移り、トンネルの約16キロ西の備前ICで山陽道に戻る(地図〈1〉)と、播磨JCTから播磨自動車道を経由し、中国自動車道に入って西へ進む(地図〈2〉)の2ルートになる。
同社によると、通行止め区間に近い国道2号の交通量は火災前に比べ最大3・6倍、中国道も同3・3倍に増加。岡山県トラック協会によると、遠回りや渋滞の影響で、通過には以前より最大で1時間多くかかるという。
仕事や旅行で月に数回、中国地方に向かう大阪市の男性会社員(40)は国道2号を走行しているといい、「渋滞に巻き込まれ、精神的に疲れる」と漏らす。

物流では影響が出ている。同協会によると、運送会社は遅れないよう出発時間を早めたり、ドライバーを増やしたりしているが、荷物の配送が1日遅れになるケースも報告されている。
過労も不安視される。27日、岐阜県から福岡県に向かう途中、国道2号に降りたトラック運転手(50)は「走行距離が増え、肉体的にしんどい。国道を走るため、信号で停止するなど、ブレーキをかけることが多い。荷崩れしないかと普段よりも気を使う」と話していた。
秋の本格的な行楽シーズンを控え、観光業界でも懸念の声が上がる。
岡山県などでは、10月以降に関西方面への修学旅行を予定している学校が多い。多くの旅行を請け負う「下電観光バス」(岡山市)は、事前に帰りの予定時刻が遅れる可能性を伝えたり、行程の変更を相談したりしている。担当者は「立ち寄り先を減らす対応も考えないといけない」と話している。

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