布川事件で再審無罪、桜井昌司さん死去 76歳 冤罪根絶へ活動

茨城県利根町布川(ふかわ)で1967年に大工の男性が殺害された「布川事件」で強盗殺人罪に問われ、無期懲役確定後に再審無罪となった桜井昌司(さくらい・しょうじ)さんが23日、水戸市内で直腸がんのため死去した。76歳。葬儀は31日午後1時、水戸市堀町2106の2の市斎場。喪主は妻恵子(けいこ)さん。
桜井さんは利根町出身。67年8月、同町布川に住む当時62歳の男性が自宅で殺害され、現金約11万円が奪われた事件で同年10月、いずれも別件逮捕されていた桜井さんと杉山卓男さん(2015年に死去)が、長時間の取り調べを受けて殺害を認めた。2人は強盗殺人罪で起訴され公判で否認に転じたが、78年に最高裁で無期懲役が確定し収監された。
判決確定後も無罪を訴え続けて収監中に再審を請求したものの棄却され、96年の仮釈放まで29年間にわたって拘置された。01年からの第2次再審請求で、水戸地裁土浦支部は「別人を現場前で見た」との近所に住む女性の調書などを基に「自白は信用できない」とし、05年に再審開始を決定。11年5月に「自白の任意性に疑いをぬぐえず、目撃証言も信用性に欠ける」として、2人に無罪判決を言い渡した。水戸地検は「控訴審での新たな立証は困難」として控訴を断念、翌6月に無罪が確定した。
桜井さんは賠償を求めて国や県と法廷で争いながら、冤罪(えんざい)根絶に向けた講演などでも精力的に活動。同じく再審で無罪になった足利事件の菅家利和さんらと交流し、冤罪の恐ろしさを訴えてきた。事件は自白偏重の取り調べのあり方に一石を投じ、取り調べ時の録音・録画の範囲が拡大される一つの契機になった。
19年に直腸がんが見つかった。余命1年と宣告された後も、闘病生活を送りながら訴訟や講演活動のほか、趣味の音楽活動などを行っていた。【森永亨、長屋美乃里】

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