性加害問題の補償を巡り、ジャニーズ事務所が示したスキームは、被害事実認定のハードルを極力低くしたものだった。2日の記者会見で、東山紀之社長は「真摯(しんし)に向き合いながら、最後まで補償を行う」と強調した。
事務所は9月中旬、救済委員会を発足。同月末までに325人が補償を求め、すでに約150人は過去の在籍確認が取れているという。
今後、救済委による事実認定と補償額の算定を踏まえ、被害者に和解案を提示。合意に至れば補償金を支払う流れとなる。補償を巡っては、東山氏が9月7日の記者会見で「法を超えた救済、補償が必要」との考えを示していた。
前検事総長の林真琴弁護士が座長を務めた外部専門家の「再発防止特別チーム」では、喜多川氏が長期間にわたり多数のジャニーズJr.らに性加害を繰り返していたと認定。その上で姉の藤島メリー泰子氏が徹底的な隠蔽(いんぺい)を図ったとしていた。
こうした経緯などから被害者側が十分な証拠を提示できない可能性もあった。このため、救済委は通常の刑事、民事裁判で要求される水準ではなく、聞き取りなどをベースに、事実認定のハードルを下げるとみられる。
救済委は、裁判官経験がある弁護士3人で構成する。元東京地検特捜部の若狭勝弁護士はこの点について「民事訴訟経験者ならば、事実認定や補償額の水準を肌感覚で持っている」と評価する。
一方、補償額の算定について、事務所の顧問を務める木目田裕弁護士はこの日の記者会見で「過去の判例や法的な分析」が参照されるとの認識を示した。若狭氏は一般論として「数十万円から数百万円程度になるのではないか」と推測した上で、「民事上の解決では当事者間の合意が優先され、上積みの可能性はある。そうでなければ、被害者はもちろん社会的な理解も得られないだろう」と指摘した。