埼玉県議会に提出されていた、子どもを自宅などに放置することを虐待と定める条例改正案について、同県議会の自民党県議団は10日、記者会見し、案を取り下げると表明した。13日の本会議で撤回の手続きを取る方針。改正案を巡っては「対応できない家庭が多い」など反対も多く、波紋を広げていた。
県虐待禁止条例改正案は、小学3年生以下の子どもを自宅などに放置することを一律に禁止し、小学4~6年生は努力義務とする内容。罰則のない「理念条例」だが、子どもだけでの留守番、登下校、公園で遊ぶことなども放置と見なしていた。
改正案は6日の常任委員会で可決。自民は議会の過半数を占め、13日の本会議で可決、成立する見通しだったが、審議では他党派から「子どもを預ける先がない」など指摘が相次いでいた。さいたま市PTA協議会は反対のオンライン署名を行い、9日までに約10万件が寄せられた。
記者会見した自民県議団の田村琢実団長は、子どもを一人にしがちな現状を再認識してもらう機会になればと改正案提出の背景を説明。「私の言葉足らずにより、全国的に不安と心配の声が広がり、さまざまな意見を頂戴した」と取り下げ理由を述べた。一方で条例案の解釈は「説明不足だった」と繰り返し、「心配の声のほとんどは虐待に当たらない」と強調した。
県庁で報道陣の取材に応じた大野元裕知事は、撤回は適切との見解を示し、「県民の声が県議団に届いたものと理解している。議案撤回は歓迎したい」と語った。
[時事通信社]